海の環境保全

 海には上流から常に大量の土砂や有機物が流れ込んできます。両者は共沈して海の底に溜まり、「へどろ」となります。溝掃除をすると黒い土が底に溜まっていますが、同じようにしてできたものです。へどろからは諸々の物質が溶出し、それらが栄養源となって魚や小動物、海藻などが育ち、それを私たちが食べることで海はその美しさを保っています。だから本来、へどろは決して悪いものではなく、豊饒な海を育ててくれるものなのです。しかし阿蘇海は閉鎖性の海である上に全周が護岸に囲まれ、もともと自浄作用が働きにくい環境にあったところに、高度成長期以後に生活排水や農業排水などによる富栄養化が進み、窒素やリンなどの栄養物質が大量に溶け出すようになり、それが海を汚濁し、魚が棲めない無酸素水域を作るようになったと考えられます。

              漁獲量

                                阿蘇海の漁獲量の変遷

 へどろから溶出するこうした栄養物質はへどろの表層に濃縮していることが知られ、海の環境修復を目的とするへどろの浚渫では、一般に表層の20センチメートルほどだけが吸引除去されます。

    

                        へどろの浚渫

 しかしこうしてへどろを除去しても、数年後には栄養物質がまた表層に濃縮し始めることが知られており、海の環境を保全するには常に表層を除去する必要があります。私たちは阿蘇海のへどろを資源として常に利用することで、阿蘇海の環境を蘇らせたいと考えています。

            

                    浚渫後の栄養物質の溶出率変化

 

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