へどろの資源化

(1)人工ゼオライトの製造 Journal of MMIJ Vol.127 No.6,7,p272-274,2011 

                                                

                                                           へどろ(左)と合成ゼオライト(右)

  阿蘇海のへどろから人工ゼオライトを製造する技術を、「阿蘇海の環境を考える会」、京都北都信用金庫、多くの市民のご支援のもとに2002~2005年にかけて開発しました。

 へどろから作った人工ゼオライトは陽イオン交換能(CEC);270meq/100g、吸湿率;23%で、天然ゼオライトの160~190meq/100g、11%前後に比べ、格段に優れた性能を持っています。

 製法は下図の通りで、へどろに苛性ソーダを加えて圧力釜で3時間ほど煮沸すると、沈降物と黒液が得られます。沈降物を水で洗浄するとゼオライトが得られ、黒液とゼオライト洗浄液の混合物に阿蘇海の海水を加えると、海水中のCa(カルシウム)イオン、Mg(マグネシウム)イオンが水酸化物を形成して二層分離します。この沈降部分を水で洗浄後に乾燥するとシリカゲルが得られ、一方の上澄み液は有害物質含有量、生活環境項目測定値ともに排水基準を下回り、そのまま海に捨てることができます。

         ゼオライト製法

                                へどろからの人工ゼオライト製造法

(2)シリカゲルの製造

                  

                                  シリカゲル

 人工ゼオライトを製造するとき、副産物として真っ黒なシリカゲルが得られます。吸湿率は63%あり、市販品の38%よりかなり大きな値を示します。わずかに残る塩分の影響と考えます。

(3)吸湿材の製造 Journal of MMIJ Vol.127 No.8,p533-535,2011 

                         

                                   吸湿材

 へどろを乾燥しただけで、ゼオライトや炭よりもはるかに優れた吸湿材を作ることができます。放湿性にも優れ、調湿材に適しています。また、この性質を利用して蒸気吸着式ヒートポンプを作ることができます。

             吸湿率

                     へどろの吸湿/放湿特性

(a)調湿材

 ある室内の相対湿度(%)の変化と、そこに置かれたへどろ吸湿材の吸湿量(kg/kg)の変化を下図に示します。へどろ吸湿材が室内湿度の変化に呼応して、水分を吸収したり放出したりすることが分かります。

           湿度変化

                     

                               室内湿度とへどろ吸湿量の関係

(b)蒸気吸着式ヒートポンプ

 蒸気吸着式ヒートポンプの原理図を下に示します。水の入った容器と吸湿材の入った容器をパイプでつなぎ、蒸気を流れやすくするため系内を真空にします。すると水から発生した蒸気は吸湿材に吸着されます。水からは新たな蒸気が発生し、それも吸湿材に吸着されます。水の蒸発熱は非常に大きいため、蒸発することで水は熱をどんどん失い冷たくなります。一方、吸湿材はその熱を吸着することで熱くなります。つまり蒸気を使って水から熱を汲出すヒートポンプが作れます。   

                       原理図 

                                蒸気吸着式ヒートポンプの原理                       

 下の左側の図は吸湿材にへどろを使って行った実験の結果です。30℃ほどの水温が10℃ほどに下がり、一方、へどろは温度が上昇するのが分かります。ある実験では水の表面に氷ができました。

 

  実験結果    氷

           吸湿材にへどろを使ったヒートポンプの実験結果              水の表面にできた氷

 水を吸着した吸湿材は再生(乾燥)する必要があります。へどろは40℃ほどの低温度でも下図のように放湿するので、蒸気吸着式ヒートポンプを作るのに非常に都合のよいことが分かります。

             再生 

                           へどろの加熱温度とそのときの吸湿率変化

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