持続可能な農業

 現代農業は作物を工業製品のように均質に大量生産して、安く供給することを目指しています。しかしこうした生産方式は大量の化石燃料、化学肥料を消費し、土壌の荒廃(砂漠化)、水資源の枯渇化を招いています。

(1) 土

 作物を育てる「土」は単なる無機質のかたまりではありません。そこには土壌微生物、ミミズ、小動物、植物などが生息し、それらの死骸や排泄物なども加わって有機物と無機物が非常に複雑に織りなす生態系になっていて、土は生きています。だから作物を育て収穫すれば、土の生態系には大きなダメージが与えられます。しかし生きているので、収奪され不足した有機物などを補ってやればやがて回復し、農業生産はずっと続けていけるのです。だから土を重機械で圧し、こね回したり、回復力を超えて生産を続けたりすると土は死んでしまい、砂漠化していきます。

                                                   

                                                                重機械を使った現代農業

(2) 水

 農業では水を大量に使用します。トウモロコシ1トンを生産するには1,000トン、大豆は2,400トン、小麦は2,900トン、精米は6,000トンの水が必要といわれます。わが国が外国から輸入する食糧の生産には年間744億トンもの水が使われ、その量は琵琶湖貯水量の2.7倍にもなるそうです。農産物の輸出入には大量の土と水の喪失が伴うのです。

 いまアメリカは自国の農産物をもっと買えと、日本を始め中国にも大きな圧力をかけています。アメリカがこのような農業大国であり得るのは、中西部にあるオガララ帯水層のお陰だといわれます。この世界最大級の地下水槽がアメリカの乾燥地帯での大規模な穀物栽培を可能にしているのです。しかしこの帯水層の水量も琵琶湖貯水量の150杯分といわれ、そのうちに枯渇します。いまは農産物の自由化が進み、日本も大量の食糧を海外から輸入していますが、その裏には砂漠化、水資源の枯渇化という恐ろしい現実が隠れています。

                  

                       オガララ帯水層

(3) 肥料

 現代農業はまた大量の化学肥料、農薬を使用します。三大栄養素の一つ「リン酸肥料」はリン鉱石から作られます。しかし産地は特定の国に偏っており、かつての輸出大国アメリカは、資源の枯渇化を理由に禁輸措置をとっています。資源大国の中国も100%の関税を課してその囲い込みを図っており、資源的に限りがあります。「カリ肥料」についても事情は似たようなものです。「窒素肥料」は空気中の窒素から作るので資源的な問題はありません。しかしその製造には天然ガスが必要であり、いずれの資源も100%を輸入に頼る日本は非常に危うい状況下にあるといえます。

(4) 地産地消の有機農業

 農業の持続性を考えるとき、大規模な現代農業、また農業のグローバル化は持続が不可能といえます。

 かつてソ連からの石油、化学肥料を頼りに大規模農業を行っていたキューバは、1991年にソ連が崩壊すると石油、化学肥料がストップし、食料危機に立たされました。そのときキューバは小規模な有機農業に舵を切らざるを得なくなり、国営農場を始め都市部の空き地までそうした農業に転換し、いまや有機農業の先進国になっています。

 私たちは生ごみの発酵肥料を使って小規模な露地栽培をやっていますが、こうした地産地消の循環型農業がやがて必要になる時がくると考えています。

 

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